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「書き出すこと」はなぜ洞察を深めるのか

マジックナンバーというものがあります。

これはワーキングメモリに関する数字で、人が同時に扱えるタスクの数や短期記憶できる事柄の数を表しています。

それがいくつなのか、そもそも正しいのかということに関しては色々と議論がありますが、何が言いたいのかというと基本的に人の頭は同時に複数のことをするのが苦手だということです。

同時にやると大抵の場合片方は疎かになります。

それどころか、片方に注意が向くと、もう片方の事はすっかり忘れてしまったりもします。

電子レンジで物を温めている間、ちょっと他のことをしてたら温めてたものの存在をすっかり忘れたりとかありますよね。

中には大容量のワーキングメモリを持っていて、多少のマルチタスクには耐えうる人も居ますが、大抵の人はそうは行きません。

普通の人はマルチタスクをすると、どちらのタスクも十分にこなせず、そのモヤモヤにより作業中ずっとストレスを受ける事になる。これはメンタルに良くないです。

作業の難易度やワーキングメモリの大きさによっては、大したストレスにはならないこともありますが、基本的にはシングルタスクが推奨されています。

 

この制約は日常生活のあらゆる場面で不便な思いをさせてきます。

 

具体的なタスク同士が干渉し合う例を上では言いましたが、他にも、緊張とか不安とか気がかりとか、そういうのもこのワーキングメモリを逼迫してきます。

不安な時は物事が手につかなかったり、過緊張状態だと頭が真っ白になったりしますが、それはワーキングメモリが不安や緊張に使われてしまうからですね。

ワーキングメモリの容量が多いと、マルチタスクから受けるストレスが軽減されるだけでなく、こうした緊張、不安、気がかりにも強くなります。

だから鍛えるとメンタルに良いんですね。

 

またこのワーキングメモリの容量に制限があることは「考える」と言う行為にも不便を強いてきます。

簡単なことを考えるときは同時に複数のことを考える必要は無いですが、複雑なことを考える際は、同時に複数のことを頭に置きながら考えなければなりません。

で、言ってきたように多くの人は複数のことを同時には扱えませんから、複雑なことを考えることは基本的にはできないと言っていい。

Aのことを考えて、それを踏まえてBのことを考えて、Cについても考えなければならないし、Dについても考えなければならない、とやってるうちにAのことについては頭から抜け落ちたりするわけです。

またAについて考えなおして、そうすると今度はBが抜けるからBもまた考えてと、こんな具合で思考がぐるぐると回り続け先に進めない。

悲しい事実ですが、一部の人以外は複雑な事を考えることが、実はそもそもできません。

 

んじゃお手上げかと言われると、そんなことはなくて、ワーキングメモリを疑似的に増やす方法はちゃんと存在します。

それが「書き出す」という方法です。

頭で考えたことをワーキングメモリに保存しながら考えるのではなく、紙などの別媒体に保存しながら考えるのです。

思考の整理にはジャーナリングが適しているよとか、文章を書くことこそが考えることだよとか、何かと書き出す行為が思考や考えの万能薬のように言われますが、これは書く行為がワーキングメモリ不足を補うからにほかなりません。

 

書きだすことを習慣にしていない人は、深く物事を考えて答えを出すという割と重要な積み重ねをしていないことになります。そうなると、色んな物事への理解は浅くなり、場合によっては自分自身についてすらきちんと理解できなかったりする。そりゃ悩みも増えるでしょう。

 

深く考えることをしなくても、一応大丈夫なように人の頭は設計されていて、その救済プログラムの名前を「直感」といいます。これは、今ある知識や経験といった材料を脳が瞬時に整理し答えを導く機構で、材料さえ揃っていれば大抵は働くし、間違っていることも少ないです。

ただ、直感によって導き出された答えの理由を、本人は把握できていません。

直感に頼って行動していれば間違うことは少ないですが、自分がなんでそう行動したのかがわからないままになります。

それだと問題が起きたとき、その問題を修正できません。

人の悩みを聞いていると、結構な割合でそこに原因があるなと感じます。

理解が浅いとか、感情の起点となっている事柄に行きついていないとか。

私も人のことは言えないので、やはり深く考えることは重要だなと思う次第です。