占星術はルーツをたどると、一定の根拠のもと生まれ発展してきた体系だと言えます。季節と農耕との関係などは、今でも十分に機能することは言うまでもないでしょう。一方で派生していく過程で荒唐無稽な考え方も多く含まれるようになっていきました。やがて訪れた失墜のきっかけは科学革命です。本稿ではその経緯について掘り下げてきます。
占星術が科学革命以降に科学から分離された理由は、主に次の3つの点が無根拠だとされたからです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 因果関係の欠如
占星術が提唱する「惑星や星座が人間に影響を与える」という主張は、科学的には因果関係が証明されていません。
科学者たちの批判:
- 物理的な影響の不足:惑星の動きが地球上の個人に具体的な影響を及ぼすためには、何らかの物理的な力(重力や放射線など)が関与している必要があります。しかし、例えば木星の重力は、地球上の小石と同程度の影響しか与えません。このため、「惑星の配置が性格や運命に影響を与える」という考えに物理的な根拠がないとされました。
- 地球の公転や歳差運動の影響:天文学の発展により、地球が公転していることや歳差運動(地軸のゆっくりした揺れ)によって星座の位置が変わることが分かりました。このため、古代に使われていた「星座の配置」が現在の位置とは一致せず、占星術の基盤が不正確とみなされました。
2. 統計的な裏付けの欠如
占星術の主張を検証するための統計的研究が行われた結果、運命や性格に対して惑星や星座の影響を示す証拠は見つかりませんでした。
主な調査例:
- 性格や出生データの分析:占星術が提唱する「出生時の星の配置が性格を決定する」という主張を検証するために、大規模なデータ分析が行われました。しかし、星座や惑星の配置と性格の関連性は見つかりませんでした。
- 「双子のパラドックス」:同じ日時・場所で生まれた双子が異なる性格や運命を持つ例が多数確認され、占星術の精度に疑問が投げかけられました。
3. 科学的方法論の欠如
科学革命(16~17世紀)以降、科学は「観察・実験・再現性」という基準を持つようになりましたが、占星術はこれに合致しませんでした。
科学的方法と占星術の違い:
- 観察の再現性がない:占星術の解釈は占星術師の主観に依存する部分が大きく、同じデータから異なる結論が出されることがありました。
- 予測の曖昧さ:占星術の予測は抽象的で解釈が広いため、どのような結果でも「当たった」と解釈されることがあります。これにより、科学的検証が困難でした。
科学と占星術の分岐点
占星術と科学が分離した象徴的な出来事には、次のようなものがあります:
-
コペルニクスの地動説(1543年)
地球が宇宙の中心ではないことが示されたことで、惑星が地球や人間に特別な影響を与えるという考えが疑問視されました。 -
ガリレオ・ガリレイと望遠鏡の発展(1609年頃)
天文学の観測精度が向上し、惑星や星座の詳細な観測が可能になりました。この結果、占星術の理論的な欠陥が浮き彫りになりました。 -
ニュートンの万有引力の法則(1687年)
ニュートン力学は惑星の動きを正確に説明できるようになりましたが、人間への影響を説明する証拠は見つかりませんでした。
しかし、占星術が支持され続けた理由
科学的批判が強まった後も占星術は廃れませんでした。その理由には以下が挙げられます:
- 心理的・文化的役割:占星術は科学ではなく「象徴的な意味」を持つ体系として、人々の自己理解や未来への指針を提供し続けました。
- ユング心理学との結びつき:20世紀に心理学者カール・グスタフ・ユングが占星術を「アーキタイプ(原型)の象徴」として捉えたことで、占星術は心理的な自己分析のツールとして再評価されました。
まとめ
占星術が科学から分離されたのは、「惑星が人間に影響を与える」という主張に科学的根拠が見つからなかったためです。しかし、それ以降も象徴体系としての価値が認められ、心理学や自己啓発の文脈で重要な役割を果たし続けています。